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- ドラえもんと小説が好き
- 少し不思議な物語が読みたい
- 孤独を抱えている人
静かに物語の世界に没頭していける「凍りのくじら」を紹介します。
「凍りのくじら」とは
誰が書いたの?
- 著:辻村 深月
- 出版社:講談社
「凍りのくじら」のあらすじ
藤子・F・不二雄をこよなく愛する、有名カメラマンの父・芦沢光が失踪してから五年。
残された病気の母をひとりで支えてきた高校生・理帆子は、一人の青年・別所あきらに出会います。
「写真のモデルになってほしい」という、彼の突然の依頼に戸惑う理帆子。
しかし、どこまでもフラットな彼にだんだんと心の内を明かすようになり、孤独だった理帆子の心は少しずつ溶けていきます。
そんな中、昔の恋人が理帆子の前に現れたことによって物語は思わぬ方向へ進んでしまい…。
孤独な理帆子を照らしたのは、あの懐かしい光でした。
家族と大切な人との繋がりを鋭い感性で描く“少し不思議”な物語。
物語の各章のタイトルがドラえもんの道具であり、その道具にちなんだストーリーが描かれています。
「凍りのくじら」を読んだ感想
本が好きで、本の世界に没頭した時代を過ごしていた人は、主人公の理帆子に共感するところがあるのではないでしょうか。
本を読むのが大好きで、私は創作の世界から大事なことを全て教わった。戦争の痛みも死別の悲しみも、恋のよろこびも。自分が経験する前に、本であらかじめ知っていた。
「凍りのくじら」本文より引用
自分が経験できないことが本の世界ではなんだってできる。自分が主人公になったようになんでも体験することができる本は私にとっては、現実を忘れさせる程夢中になるものでした。
そんな主人公の理帆子は、どこにいても「少し・不在」だと自分を表現しています。誰とでも合わせることができ、とけこむことができるけれど、どこか冷めていて自分の居場所を見つけられず息苦しさを感じている。
理帆子の心を描きながら、理帆子を取り巻く人間関係が描かれていますが、展開がゆっくりとスローペースなので、物語に入り込むのには時間がかかりました。
SFとは「少し・不思議な物語」であり、理帆子が「少し(S)・なんとか(F)」と周りの人をSFで考えながら進んでいくので、いつの間にか自分にも「少し(S)・不思議(F)」の視点が芽生えてきます。
理帆子の孤独は、思春期が抱く感情にも似ていて、もっと若い頃に読んだら、物凄く共感してヒリヒリするような痛い気持ちになりそうだと感じました。
大人になってから読んでも、とっても面白いです。ドラえもんの道具も沢山でてきて、懐かしさを感じると同時にその奥にあるドラえもんの物語の深さを感じることができます。
この本を読んだ後にドラえもんをもう一度読んでみたいと思える作品でした。
辻村深月さんの作品は、プロローグでは、さらっとよくわからないまま読んでいるけれど、エピローグで同じシーンが描かれるのを読むころには全ての伏線が見事に回収されていることに気づいていつも驚かされます。
そして、もう1度読み返したくなります。
泣きそうになりそうなぐらい辛いことも最後の親の愛や、孤独から救われハッピーエンドとしておわるところなど、読み終わって幸せな気持ちになりました。
でも、この1冊を表現するのはとても難しく一言でいうなら、「少し・不思議な物語」というのがぴったりあてはまっています。
辻村深月さんが好きなら絶対に読んで欲しい作品だし、読んだことがない人にもぜひ手に取ってみてほしい作品でした。
レビューでは、評価がわかれる作品ですが、ぜひ最後まで読んでみてほしいです。
興味を持った方は1度手にとってみてはいかがでしょうか。
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